【さい帯のすべて】妊娠中から出産後まで!役割・トラブル・保管方法まるわかりガイド

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「さい帯(へその緒)」は、お腹の赤ちゃんとママをつなぐ大切な命綱です。この記事では、さい帯の基本的な役割や構造から、妊娠中のエコーでの見え方、赤ちゃんの首に巻きつく「さい帯巻絡」などのトラブルと対処法、出産時のカットのタイミング、そして出産後のへその緒のケアや思い出としての保管方法まで、気になる情報を網羅的に解説します。さらに、近年注目される「さい帯血保管」についても、公的バンクと民間バンクの違いや費用、手続きの流れを詳しく紹介。この記事を読めば、妊娠中から出産後までのさい帯に関するあらゆる疑問や不安が解消され、安心してマタニティライフを送り、出産に臨むための知識がすべて手に入ります。

目次

さい帯(へその緒)とは 赤ちゃんとお母さんをつなぐ命綱

さい帯とは、一般的に「へその緒」として知られ、妊娠中にお母さんの胎盤と赤ちゃんのおへそをつないでいる、白く弾力のある管状の組織です。見た目は半透明のコードのようで、中には赤ちゃんが成長するために必要な血管が通っています。まさに、お腹の赤ちゃんとお母さんをつなぐ「命綱」と呼ぶべき、非常に重要な役割を担っています。

さい帯の基本的な構造と役割

さい帯は、ただの管ではありません。赤ちゃんの生命を維持するための高度な機能を持った、緻密な構造をしています。主に3本の血管と、それらを保護する「ワルトン膠質(ゼリー)」と呼ばれるゼリー状の組織で構成されています。

3本の血管の内訳は、1本の「臍帯静脈(さいたいじょうみゃく)」と2本の「臍帯動脈(さいたいどうみゃく)」です。それぞれの血管が担う役割は正反対で、絶えず赤ちゃんと母体の間で生命活動に必要な物質の交換を行っています。

血管の種類本数血液の流れ主な役割
臍帯静脈1本胎盤(母体) → 赤ちゃん酸素や栄養素を赤ちゃんに届ける
臍帯動脈2本赤ちゃん → 胎盤(母体)二酸化炭素や老廃物を母体へ送り返す

これらの大切な血管は、ワルトン膠質という特殊なゼリー状の物質によって手厚く保護されています。このワルトン膠質があるおかげで、さい帯はクッション性と弾力性を持ち、赤ちゃんがお腹の中で動いても、血管が折れ曲がったり、圧迫されたりするのを防いでいます。このように、さい帯は赤ちゃんが元気に育つための、極めて重要な生命維持装置なのです。

さい帯の長さや太さに個人差がある理由

さい帯の長さや太さは、赤ちゃんによってそれぞれ異なります。一般的に、正期産の時点でのさい帯の長さは平均で約50cm〜60cm、太さは直径約1.5cm〜2.0cmほどですが、これには大きな個人差があります。

さい帯の長さに個人差が生まれる明確な理由は完全には解明されていませんが、いくつかの要因が関係していると考えられています。

  • 胎動の多さ:お腹の中で赤ちゃんが活発に動くことで、さい帯が物理的に引っ張られて長くなるという説が有力です。
  • 遺伝的な要因:体質など、遺伝的な要素も関係している可能性があります。
  • 羊水量や胎盤の位置:子宮内の環境も、さい帯の発育に影響を与えると考えられています。

妊婦健診のエコー検査で「さい帯が長い(短い)ですね」と言われることがあるかもしれませんが、平均的な範囲から多少外れていても、それだけで赤ちゃんの成長に問題があるわけではありません。さい帯の状態は妊婦健診で医師がしっかりと確認していますので、過度に心配する必要はありません。気になることがあれば、健診の際に医師や助産師に質問してみましょう。

妊娠中のさい帯と胎児への影響

さい帯(へその緒)の役割と構造 お母さん (胎盤) 赤ちゃん (胎児) 酸素・栄養・抗体・水分 臍帯静脈(さいたいじょうみゃく)を通る 老廃物・二酸化炭素 臍帯動脈(さいたいどうみゃく)を通る さい帯の断面図(血管の構造) ワルトン膠質(ゼリー状の組織) 臍帯静脈(1本) お母さんからの栄養を運ぶ 臍帯動脈(2本) 赤ちゃんからの老廃物を運ぶ エコー検査のポイント 「ミッキーマウス」のような 形に見えるか確認します

妊娠期間中、さい帯は胎盤を通じてお母さんと赤ちゃんを結び、胎児の成長を支える極めて重要な役割を担います。お腹の中で赤ちゃんが健やかに育つために、さい帯がどのように機能しているのか、また、妊婦健診でどのようなことがわかるのかを詳しく見ていきましょう。

お腹の赤ちゃんへ栄養と酸素を届けるさい帯

さい帯は、単なる管ではありません。胎盤から赤ちゃんのおへそへとつながり、生命維持に必要な物質を絶え間なく送り届けるライフラインです。さい帯は、お腹の赤ちゃんが健やかに成長するために不可欠な命綱であり、酸素や栄養の供給から老廃物の排出まで、その役割は多岐にわたります。

さい帯の中には、通常3本の血管(臍帯動脈2本、臍帯静脈1本)が通っており、それぞれが異なる役割を持っています。この血管を通じて、お母さんの血液から作られた栄養と酸素が赤ちゃんに届けられ、同時に赤ちゃんから出た老廃物が胎盤へと送り返されるのです。

方向主な物質
お母さん → 赤ちゃんへ酸素、ブドウ糖、アミノ酸、脂質、ビタミン、ミネラル、水分、抗体(免疫グロブリンG)など
赤ちゃん → お母さんへ二酸化炭素、尿素などの老廃物

このように、さい帯は赤ちゃん自身の肺や腎臓が機能し始めるまでの間、呼吸や排泄の役割も代行しています。また、お母さんが持つ免疫の一部(抗体)を赤ちゃんに送ることで、生まれてすぐの赤ちゃんを感染症から守るという大切な働きも担っています。

エコー検査でわかるさい帯の状態

妊婦健診で行われる超音波(エコー)検査では、赤ちゃんの成長だけでなく、さい帯の状態も確認しています。エコー検査によって、さい帯の血流や構造、赤ちゃんとのかかわりなどを確認し、胎児の健康状態を把握する重要な手がかりを得ることができます。医師はこれらの情報を総合的に判断し、妊娠経過が順調であるかを確認します。

ただし、エコー検査ですべてがわかるわけではありません。さい帯は羊水の中で常に動いているため、その時々の状態を断片的に見ているに過ぎないことも理解しておきましょう。

検査項目確認する内容
さい帯の血流カラードップラー法という技術を使い、さい帯内の血液がスムーズに流れているかを確認します。血流の速度や抵抗を測定し、赤ちゃんに十分な酸素や栄養が送られているかを評価します。
さい帯の血管の数さい帯の断面を観察し、通常あるべき臍帯動脈2本と臍帯静脈1本が揃っているかを確認します。まれに動脈が1本しかない「単一臍帯動脈」が見つかることがあります。
さい帯の付着部位さい帯が胎盤のどの位置に付着しているかを確認します。通常は中央付近ですが、端に付着(辺縁付着)したり、卵膜に付着(卵膜付着)したりするケースもあります。
さい帯巻絡(けんらく)さい帯が赤ちゃんの首や体、手足に巻き付いていないかを確認します。多くの場合は問題になりませんが、巻き付きが強い場合は注意深く経過を観察することがあります。

これらの検査で何らかの所見が見られた場合でも、必ずしもすぐに問題となるわけではありません。多くの場合は経過観察となりますが、気になることがあれば過度に心配せず、健診の際に医師や助産師に質問し、説明を受けることが大切です。

知っておきたいさい帯のトラブルと対処法

図解:知っておきたいさい帯のトラブル 4つのポイント 1. さい帯巻絡(首への巻き付き) ● 頻度:全分娩の20〜25% ● 多くは自然にほどける ● 胎動の変化に注意 過度な心配は不要 2. さい帯下垂・脱出 ! ● 赤ちゃんより先に さい帯が出てしまう ● 緊急性が高い! 破水時に紐状のものが出たら すぐに救急車&胸膝位 3. 単一臍帯動脈 (SUA) 正常(3本) 単一(2本) ● 動脈が1本少ない ● 精密検査を行う 他の異常がなければ、ほとんどは 問題なく元気に育つ 4. 卵膜付着・前置血管 卵膜上の血管 ● 血管がむき出しの状態 ● 破水時に出血リスク 前置血管の場合は 管理入院・帝王切開へ

赤ちゃんとお母さんをつなぐ大切なさい帯ですが、ごくまれにトラブルが起こることがあります。多くの場合は妊婦健診の超音波(エコー)検査で早期に発見され、適切に対処することで無事に出産を迎えることができます。不安になりすぎる必要はありませんが、どのようなトラブルがあるのか、もしもの時にどう対処すればよいのかを知っておくことはとても大切です。ここでは代表的ないくつかのトラブルについて詳しく解説します。

さい帯巻絡 赤ちゃんの首への巻き付き

さい帯巻絡(さいたいけんらく)とは、へその緒が赤ちゃんの体の一部、特に首に巻きついてしまう状態のことです。妊婦健診で「へその緒が首に巻いている」と告げられると、とても心配になるかもしれません。しかし、さい帯巻絡は決して珍しいことではなく、全分娩の20〜25%程度で見られるといわれています。

お腹の中で赤ちゃんが活発に動き回ることで自然に起こる現象で、多くはゆるく巻いているだけです。羊水の中で浮いているため、さい帯が強く締まることはほとんどなく、自然にほどけることも少なくありません。そのため、巻絡があるからといって、直ちに赤ちゃんが苦しくなるわけではありません。

ただし、まれにさい帯が何重にもきつく巻き付いていたり、分娩の進行中にさい帯が引っ張られたりすることで、赤ちゃんの心拍数が下がるなどの「胎児機能不全」のサインが見られることがあります。その場合は、分娩を速やかに進めるための吸引分娩や、緊急帝王切開が必要になることもあります。妊婦さん自身にできる予防法はありませんが、普段から胎動をよく感じ、いつもと違う激しい動きや、逆に急に胎動が少なくなったと感じた場合は、すぐに産院へ連絡することが重要です。

さい帯下垂・脱出 緊急性が高いケース

さい帯下垂(さいたいかすい)とさい帯脱出(さいたいだっしゅつ)は、発生頻度は非常に低いものの、赤ちゃんの命に直結する極めて緊急性の高い状態です。

  • さい帯下垂:破水する前に、さい帯が赤ちゃんより先に子宮口の近くまで下がってきてしまう状態。
  • さい帯脱出:破水した際に、さい帯が赤ちゃんより先に子宮口から腟内、あるいは体の外へ出てきてしまう状態。

これらの状態になると、赤ちゃんの体と産道(骨盤や子宮壁)との間にさい帯が挟まれて圧迫されてしまいます。その結果、さい帯を通る血液の流れが止まり、赤ちゃんへの酸素供給が絶たれてしまい、重い脳性麻痺や死に至る危険性が非常に高くなります。骨盤位(逆子)や羊水過多、前期破水などがリスク因子として知られています。

もし破水した際に、何かぬるっとした紐状のものが腟から出てきたり、触れたりした場合は、さい帯脱出の可能性があります。絶対に自分で押し戻そうとせず、その場で横になり、お尻を高く持ち上げた姿勢(胸膝位:四つん這いになって胸を床につけるポーズ)をとり、すぐに救急車を呼んでください。病院では、一刻も早い救出を目指して緊急帝王切開が行われます。

単一臍帯動脈と診断されたら

通常のさい帯は、赤ちゃんから胎盤へ老廃物を送る「2本の臍帯動脈」と、胎盤から赤ちゃんへ酸素と栄養を送る「1本の臍帯静脈」の合計3本の血管で構成されています。単一臍帯動脈(たんいつさいたいどうみゃく:SUA)とは、このうち臍帯動脈が1本しかない状態を指し、妊婦健診のエコー検査で診断されることがあります。

「血管が1本足りない」と聞くと不安になるかと思いますが、単一臍帯動脈と診断されても、他の異常が見られない「孤立性」の場合、ほとんどは赤ちゃんの発育に影響なく、元気に生まれてきます。残った1本の動脈と静脈が代償的に太くなることで、機能が維持されるためです。

ただし、約20〜30%のケースで、心臓、消化器、泌尿器系の形態異常や染色体異常などを合併することがあると報告されています。そのため、単一臍帯動脈と診断された場合は、他の異常がないかを確認するために、より詳細な超音波検査(胎児スクリーニング検査)が行われることが一般的です。診断後は、赤ちゃんの発育が順調かどうかを、通常よりも慎重に健診でフォローアップしていきます。

その他のさい帯付着部異常など

さい帯が胎盤のどこに付着しているかによって、トラブルの原因となることがあります。主な付着部異常には以下のようなものがあり、いずれもエコー検査で発見される可能性があります。

異常の種類状態リスクと対処法
卵膜付着(らんまくふちゃく)さい帯が胎盤本体ではなく、周囲の卵膜に付着している状態。血管が卵膜上をむき出しで走行する。むき出しの血管が圧迫や破水時に損傷しやすく、胎児発育不全や、後述する「前置血管」の原因となる。分娩時のリスクを避けるため、計画帝王切開が選択されることが多い。
辺縁付着(へんえんふちゃく)さい帯が胎盤の中央ではなく、端(フチ)の部分に付着している状態。多くは問題になりませんが、まれに胎児発育不全との関連が指摘される。慎重な経過観察が行われる。
前置血管(ぜんちけっかん)卵膜付着などによってむき出しになった血管が、子宮の出口(内子宮口)を塞ぐように存在している状態。破水時に血管が破れると、胎児の血液が大量に失われ、極めて危険な状態に陥る。診断された場合は、出血を予防するために管理入院となり、早期に計画帝王切開で分娩するのが一般的。

これらのトラブルは頻度が高いものではありませんが、万が一診断された場合は、医師や助産師からの説明をよく聞き、指示に従って行動することが、お母さんと赤ちゃんの安全にとって最も重要です。

出産時のさい帯カットについて

赤ちゃんが誕生する感動的な瞬間、多くのご家族が関心を持つのが「さい帯カット」です。これは単なる処置ではなく、赤ちゃんが母体から独立して新たな一歩を踏み出す象徴的な儀式でもあります。ここでは、さい帯をいつ、誰が、どのように切るのか、最新の情報を交えながら詳しく解説します。

さい帯を切るタイミング 早期と晩期の違い

さい帯は、赤ちゃんが生まれて自発呼吸を始めると、その役目を終えます。さい帯をカットするタイミングは、大きく分けて「早期」と「晩期」の2つがあり、それぞれに特徴があります。近年、世界保健機関(WHO)などが推奨しているのが「晩期臍帯結紮(ばんきさいたいけっさつ)」です。

晩期臍帯結紮(Delayed Cord Clamping / DCC)とは、赤ちゃんが生まれてからすぐにはさい帯を切らず、さい帯の拍動が自然に弱まるのを待ってから(通常1〜3分後)カットする方法です。これにより、胎盤に残っている血液が赤ちゃんに十分に移行します。

晩期臍帯結紮は、赤ちゃんが胎盤からより多くの血液を受け取ることができ、生後の鉄分貯蔵量を増やして貧血を予防する効果が期待されています。一方、従来行われてきた、生まれて1分以内にカットする方法を「早期臍帯結紮(Early Cord Clamping / ECC)」と呼びます。

それぞれのメリットと注意点を下の表にまとめました。どちらの方法を選択するかは、赤ちゃんとママの状態、そして産院の方針によって決まります。希望がある場合は、事前に医師や助産師と相談しておきましょう。

項目晩期臍帯結紮(DCC)早期臍帯結紮(ECC)
カットのタイミング出生後1〜3分以上経過し、さい帯の拍動が停止・減弱してから出生後60秒以内
赤ちゃんへのメリット
  • 鉄分の貯蔵量が増え、生後数ヶ月の貧血を予防
  • 循環血液量が増加し、移行期をスムーズに過ごせる
  • 幹細胞を多く含む血液が移行する
  • 新生児蘇生が速やかに開始できる
  • 重度の黄疸リスクをわずかに低減できる可能性がある
赤ちゃんへの注意点
  • 生理的な黄疸が強めに出ることがあり、光線療法が必要になる可能性がわずかに高まる
  • 生後の鉄欠乏性貧血のリスクが高まる可能性がある
お母さんへの影響産後の大量出血のリスクに有意な差はないとされています。特にありません。
実施できないケース赤ちゃんの状態が悪く、すぐに新生児科医の処置が必要な場合や、前置胎盤などお母さん側に緊急の対応が必要な場合は、安全を最優先し、早期にカットされることがあります。

パパによるさい帯カットは可能?

立ち会い出産をされるご家庭にとって、「パパがさい帯をカットする」ことは、忘れられない思い出の一つになるでしょう。多くの産院で、記念としてパパによるさい帯カットが実施されています。

ただし、パパによるさい帯カットを希望する場合は、必ず事前に産院へ確認し、バースプランに記載しておくことが重要です。産院の方針や、出産の状況(緊急帝王切開など)によっては対応できない場合もあります。

実際の手順は以下の通りで、医療スタッフが安全を確保した上で行われます。

  1. 医師や助産師が、さい帯の血流を止めるために専用の医療器具(鉗子)で2ヶ所をしっかりと挟みます。
  2. パパは、その鉗子と鉗子の間の、すでに血流がなくなった部分を医療用のハサミでカットします。
  3. 痛みや血液の噴出などはなく、安全にカットできます。

さい帯は、よく「弾力のあるゴム」「ホルモンのような食感」などと表現されます。見た目以上に丈夫で、切る際には少し力が必要です。このユニークな感触も、パパにとっては命のつながりを実感する貴重な体験となるはずです。写真やビデオ撮影を希望する場合も、事前に産院のルールを確認しておきましょう。

出産後のさい帯(へその緒)のケアと保管

へその緒ケアの3つのポイント 折り返してへそを出す 乾燥中のへその緒 1 清潔にする 沐浴後、根元の水分を 綿棒などで優しく拭き取る 2 乾燥させる ジュクジュク防止のため 風を通してしっかり乾かす 3 おむつは折り返す へその緒に当たらないよう おむつ上部を外側に折る ※赤みや膿、異臭がある場合は小児科を受診してください

赤ちゃんが生まれて退院した後、多くのママやパパが初めて直面するのが「へその緒」のケアです。出産時にカットされたさい帯の一部は、赤ちゃんのおへそにクリップで留められた状態で残っています。これは「臍帯(さいたい)断端」と呼ばれ、数週間かけて乾燥し、自然にポロリと取れます。この大切な時期の正しいケア方法や、万が一のトラブルへの対処法、そして赤ちゃんとママを繋いでいた証であるへその緒の保管方法まで、詳しく解説します。

へその緒が乾燥して取れるまでの日数と消毒

退院後の赤ちゃんのお世話の中でも、特にデリケートに感じるのがおへそのケアかもしれません。しかし、ポイントさえ押さえれば決して難しいものではありません。清潔と乾燥を心がけましょう。

取れるまでの期間と状態の変化

へその緒は、一般的に生後1週間から2週間ほどで自然に取れます。ただし、赤ちゃんの状態やへその緒の太さによって個人差があり、3週間以上かかることもあります。日に日に水分が抜けて黒っぽく、硬くミイラのように変化していきます。取れる直前には根元が少しじゅくじゅくしたり、少量の出血が見られたりすることもありますが、これは自然な経過の一部です。

基本的なケアと消毒の考え方

へその緒のケアで最も大切なのは「清潔」と「乾燥」を保つことです。沐浴後などに、以下の手順でケアを行いましょう。

  1. 沐浴後、まずは清潔なガーゼやタオルで体全体の水分を拭き取ります。
  2. 次に、へその緒の根元を指で優しく広げ、綿棒やガーゼの角を使って、おへそのシワの間の水分を丁寧に吸い取ります。
  3. 根元までしっかりと風を通して乾燥させます。

消毒については、かつては消毒用アルコールなどで毎日消毒する方法が主流でしたが、近年では「乾燥を促すことが最も重要」という考えから、特別な指示がない限りは消毒不要とする産院も増えています。細菌の感染(臍炎)を防ぐ目的で消毒を指示された場合は、必ず産院の指導に従ってください。消毒液をつけた綿棒で、へその緒の根元をぐるりと一周するように優しく拭います。

また、おむつを付ける際は、へその緒がおむつに擦れたり、おしっこで濡れたりしないよう、おむつの上部を外側に折り返して、おへそが出た状態にしてあげましょう。

へその緒のトラブルと受診の目安

ほとんどの場合、へその緒は問題なく自然に取れますが、まれに感染などのトラブルが起こることもあります。慌てずに対処できるよう、注意すべきサインと病院を受診する目安を知っておきましょう。

症状考えられる状態対処法・受診の目安
少量の出血があるへその緒が取れる過程や、取れた直後によく見られます。衣類やおむつとの摩擦が原因のこともあります。清潔なガーゼで数分圧迫して止血できれば、基本的には様子見で大丈夫です。出血がダラダラと続く場合や、量が多い場合は小児科を受診しましょう。
おへそやその周りが赤い・腫れている・膿が出る・嫌な匂いがする細菌に感染して炎症を起こしている「臍炎(さいえん)」の可能性があります。これは感染のサインです。放置すると重症化する恐れがあるため、すぐに小児科を受診してください。自己判断で市販薬などを使わず、医師の診察を受けましょう。
へその緒が取れた後に赤い肉の塊(できもの)ができた「臍肉芽腫(さいにくげしゅ)」と呼ばれる状態です。へその緒が取れた後の組織が盛り上がってできてしまいます。自然に治ることは少ないため、1ヶ月健診などで指摘されることも多いです。小児科や小児外科で診てもらいましょう。多くは硝酸銀という薬品で焼灼する簡単な処置で治ります。
泣いたりいきんだりするとおへそが飛び出す「臍(さい)ヘルニア」、いわゆる「でべそ」です。おへその部分の筋肉がまだ弱いために、腸が飛び出して起こります。生後1〜2ヶ月頃に目立ち始めますが、ほとんどの場合は腹筋が発達する1歳頃までに自然に治ります。気になる場合は、乳幼児健診の際に医師に相談してみましょう。

思い出に残すへその緒の保管方法とアイデア

無事に取れたへその緒は、赤ちゃんとママが一心同体だった「命綱」の証です。日本では古くから、子どもの健康を願うお守りとして、また大切な記念品として保管する文化があります。大切な思い出をきれいに残すための保管方法と、現代ならではのアイデアをご紹介します。

カビさせないための基本の保管方法

へその緒を長期保管する上で最大の敵は「湿気」です。カビを防ぐために、必ず完全に乾燥させてからケースにしまうことが最も重要です。へその緒が取れてから、さらに数日間は風通しの良い場所で乾燥させましょう。ティッシュなどにくるんで置いておくと良いでしょう。

日本では伝統的に、防湿・防虫効果に優れた「桐箱」に入れて保管するのが一般的です。産院で記念として桐箱をプレゼントしてくれることも多いですが、市販のへその緒ケースもたくさんあります。赤ちゃんの名前や生年月日を入れられるものを選ぶのも素敵です。

思い出が広がる保管アイデア

  • ベビーメモリアルボックスに入れる
    へその緒だけでなく、初めて切った髪の毛(胎毛)や抜けた乳歯、小さな手形・足形、エコー写真など、赤ちゃんの成長の記録をまとめて保管できるボックスです。思い出を一つの場所に集めることができ、将来子どもが大きくなった時に一緒に見る楽しみも生まれます。
  • へその緒アクセサリーに加工する
    近年では、へその緒を樹脂(レジン)などに封入し、ネックレスのチャームやキーホルダーといったアクセサリーに加工するサービスもあります。世界に一つだけの特別な記念品として、身につけたり飾ったりすることができます。
  • 胎毛筆と一緒に保管する
    赤ちゃんの初めての散髪でカットした髪の毛で作る「胎毛筆(たいもうふで)」も人気の記念品です。胎毛筆とへその緒を一緒に保管できる専用の美しいケースも販売されています。

どの方法で保管するにしても、赤ちゃんと繋がっていた大切な証です。ご家庭に合った方法で、愛情を込めて保管してあげてください。

さい帯血保管という未来への選択肢

出産は、赤ちゃんが生まれる奇跡の瞬間であると同時に、その時にしか得られない貴重なものを手にするチャンスでもあります。それが「さい帯血」です。さい帯血は、赤ちゃん自身や家族の未来の健康を守るための「お守り」になる可能性があります。ここでは、さい帯血保管という選択肢について、詳しく解説していきます。

さい帯血とは 何に使われるのか

さい帯血とは、出産後に赤ちゃんのへその緒(さい帯)と胎盤の中に残っている血液のことです。この血液には、体のさまざまな細胞の元となる「造血幹細胞(ぞうけつかんさいぼう)」が豊富に含まれています。

造血幹細胞は、赤血球・白血球・血小板といった血液細胞を作り出す能力を持っており、この働きを利用した治療が「造血幹細胞移植」です。さい帯血は、主に以下のような病気の治療に役立てられています。

  • 白血病
  • 再生不良性貧血
  • 先天性免疫不全症
  • 一部の代謝性疾患

さらに近年では、脳性まひや脊髄損傷、自閉症スペクトラムなど、これまで治療が難しかった病気に対する再生医療・細胞治療への応用も研究が進められており、その可能性に大きな期待が寄せられています。出産時にしか採取できないさい帯血は、まさに赤ちゃんからの「命の贈り物」と言えるでしょう。

公的さい帯血バンクと民間さい帯血バンクの違い

さい帯血を保管する方法には、「公的さい帯血バンク」への寄付と、「民間さい帯血バンク」でのプライベート保管の2種類があります。それぞれの目的や特徴は大きく異なるため、違いを正しく理解することが大切です。

誰かのために役立てる「公的バンク」と、自分や家族のために備える「民間バンク」。どちらを選ぶかは、ご家庭の価値観や考え方によって決まります。以下に主な違いをまとめました。

項目公的さい帯血バンク民間さい帯血バンク
目的第三者への提供(寄付)赤ちゃん本人や家族のため(プライベート保管)
所有権バンクに帰属(寄付後は返還不可)契約者(本人・家族)
使用対象適合する不特定多数の患者原則として赤ちゃん本人または血縁者
費用無料(寄付のため)有料(初期費用+保管費用)
保管期間バンクの規定による契約期間による(10年、20年など)
採取できる産院提携している一部の産科医療機関のみ全国の多くの産科医療機関で可能(要事前確認)

公的バンクへの寄付は、費用がかからず社会貢献につながる素晴らしい行為ですが、採取できる産院が限られている点や、一度寄付すると自分や家族のために使うことはできない点に注意が必要です。一方、民間バンクは費用がかかりますが、万が一の際に赤ちゃん本人や、適合すれば兄弟など家族のために使えるという安心感があります。

さい帯血保管の費用と手続きの流れ

民間さい帯血バンクで保管する場合の、一般的な費用と手続きの流れについて解説します。バンクによって詳細は異なるため、必ず各社の資料で確認してください。

保管にかかる費用

民間バンクでのさい帯血保管には、主に「初期費用」と「保管費用」の2種類がかかります。

  • 初期費用:契約料、さい帯血の採取・輸送、検査、処理などにかかる費用です。一般的に20万円〜25万円前後が目安となります。
  • 保管費用:さい帯血を冷凍保管するための費用です。10年や20年といった期間で契約し、一括払いや分割払い(年払いなど)で支払います。10年間の保管で5万円〜15万円程度が目安です。

費用は決して安くありませんが、分割払いやさまざまな料金プランが用意されている場合も多いため、複数のバンクを比較検討してみましょう。

手続きの基本的な流れ

さい帯血保管の手続きは、出産前に済ませておく必要があります。いざという時に慌てないよう、早めに準備を始めましょう。

  1. 情報収集・資料請求(妊娠中期〜後期)
    まずは複数の民間さい帯血バンクから資料を取り寄せ、サービス内容や費用を比較検討します。
  2. 申し込み・契約(出産予定日の1ヶ月前までが目安)
    保管を希望するバンクを決め、申込書を提出して契約を完了させます。
  3. 採取キットの受け取り
    契約後、バンクから専用の「さい帯血採取キット」が自宅に送られてきます。受け取ったら内容物を確認し、入院バッグに入れて出産に備えます。
  4. 出産当日の採取
    出産する産院に入院する際、医師や助産師にさい帯血の保管を希望していることを伝え、採取キットを渡します。採取は、赤ちゃんや母体に負担をかけることなく数分で完了します。
  5. 輸送・保管開始
    採取後、バンクに連絡すると専門の業者がさい帯血を回収に来ます。その後、バンクの施設で厳格な検査・処理が行われ、問題がなければ長期の冷凍保管が開始されます。後日、保管証明書などが送られてきます。

出産予定日間近では申し込みが間に合わない可能性があるため、安定期に入ったら検討を始めるのがおすすめです。ご家族でよく話し合い、後悔のない選択をしてください。

まとめ

本記事では、妊娠中から出産後まで、赤ちゃんとお母さんをつなぐ「さい帯(へその緒)」のすべてを解説しました。さい帯は、お腹の赤ちゃんに栄養と酸素を届ける、かけがえのない命綱です。

さい帯巻絡などのトラブルに不安を感じるかもしれませんが、重要なのは定期健診で経過をみること、そして異変を感じたらすぐに医師へ相談することです。これが母子の安全を守る最善の結論です。出産時にはさい帯カットのタイミングを選ぶこともでき、産後のへその緒は大切な思い出の品となります。

さらに、さい帯血を保管することは、白血病などの治療に役立つ可能性を秘めた未来への備えです。公的さい帯血バンクと民間さい帯血バンクの違いを理解し、ご家庭に合った選択を検討することが大切です。さい帯への理解を深め、安心して出産に臨みましょう。

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